2010/04/06
衆議院本会議趣旨説明
私は、自由民主党・改革クラブ・みんなの党の提出者を代表して、ただいま議題となりました、「国家公務員法等の一部を改正する法律案」及び「幹部国家公務員法案」の提案理由を説明いたします。
昨年夏の総選挙で、民主党は、「脱官僚依存」と「天下りの根絶」を最大の争点のひとつとして掲げ、政権交代を果たしました。
ところが、その後の政権運営はどうでしょうか。「天下りの根絶」は、政権発足後早々に、逆走が始まりました。日本郵政株式会社の社長に、元大蔵事務次官を就けるという典型的な天下り・わたり人事が、鳩山内閣の手で行われました。その後も、天下り人事が後を絶ちません。
「脱官僚依存」も迷走するばかりです。予算編成も、事業仕分けも、「財務省依存」で行われ、肝心なところで「政治主導」は全く発揮できていません。そうかと思えば、一方で、間違った「政治主導」も横行しています。総理以下が思いつきの発言を繰り返し、迷走を続ける普天間問題は、最たる例です。
もう一つ例を申し上げれば、先日、原口大臣、仙谷大臣、前原大臣が国会に遅刻されるという大失態がありました。報道によれば、原口大臣は、あろうことか、この責任を事務方に押し付け、遅刻問題を理由に、総務省の担当課長らを更迭したといいます。
自らの失態の責任をとらず、官僚に責任を押し付けようとする政治家に、「政治主導」を唱える資格はあるのでしょうか。
まして、防災担当の立場でありながら、地震発生時にSPも付けず出歩いていたことが報じられる中井国家公安委員長には、「政治主導」など夢にも考えないでいただきたい、というのが多くの国民の思いでしょう。
こうした、鳩山内閣の閣僚の皆さんの言動を見るにつけ、鳩山内閣には「政治主導の確立」、そのための「公務員制度改革」は、到底無理ではなかろうか、と思わずにいられませんでした。
そうした中、今回、鳩山内閣により「国家公務員法等の一部を改正する法律案」が提出されました。案の定というべきでしょうか。内容を見れば、政権交代前、野党時代の民主党が唱えていた主張とは、180度逆方向です。
かつての民主党の主張はどこに行ってしまったのか、と言わざるを得ません。
これまで、自民党政権において、「政治主導への転換」、「天下りの根絶」といった課題について、我々は、一歩一歩歩みを積み重ねてきました。これは、国民の皆さんから見れば、必ずしも満足いかず、「不十分」とか「スピードが遅すぎる」と見える面もあったかもしれません。こうした点は、我々は率直に反省しなければならないと思います。
しかし、今回、鳩山内閣が提出した法案は、こうした我々の積み重ねてきた成果を破壊し、「官僚依存の続行」、「天下りの温存」に突き進もうとする内容です。
こうした、国民を愚弄するような行いを、黙って見過ごすわけにはいきません。
そもそも、「脱官僚依存」や「天下りの根絶」、そして「真に国民のために働く、活力ある霞ヶ関の実現」といったテーマは、民主党が唱え始めたものではありません。自民党政権時代、最初は橋本行革の中で、こうした議論が本格的になされるようになりました。
その後、安倍内閣では、天下りの根絶を目的として、各省庁による再就職あっせんを禁止し、官民人材交流センターに一元化する法案を提出しました。この法案では、同時に、人事の基本を、明治時代以来続いていた「年功序列」から初めて「能力実績主義」へ転換することも定めて国会で成立しました。
当時、民主党は、この法案に対して、「センターは天下りバンクだ」と主張し、強く批判していましたが、今回の政府提出法案を見ると、むしろ、センターを再就職斡旋機関として位置付け直し、恒久化しようとしています。また、その後の「裏下り」の横行などに対しても、何ら措置が講じられていません。
その上、鳩山内閣の閣僚の方々は、「早期退職勧奨は続けざるを得ない」などとも言い始めています。かつて民主党は、「早期退職勧奨の廃止」こそが天下り根絶の切り札と訴え、マニフェスト詳細版にも明記していたではないですか。
民主党は、もはや「天下りの根絶」を断念したとしか思えません。
福田内閣では、公務員制度改革の全体像のプログラムを定める「国家公務員制度改革基本法案」を提出し、与野党を超えた修正協議を経て、国会で成立しました。
「基本法」で第一の課題とされた、幹部人事を内閣に一元化するとともに、公務員制度全体の企画立案などを行う「内閣人事局」の設置については、麻生内閣で法案を提出しました。残念ながら、この法案は、審議に入ることさえできず、廃案となりました。
今回の政府提出法案では、「内閣人事局」についての規定がおかれていますが、その内容は、驚くべきことに、麻生内閣の法案よりはるかに後退し、「何の力もない、無力な内閣人事局」を作ろうとするものになっています。
「基本法」で、「内閣人事局」には、総務省、人事院その他機関の機能を移管すると定めているにもかかわらず、「基本法」を無視し、機能を一切移管していません。
そして、あろうことか、「基本法」違反を逃れるため、「基本法」自体を改正し、プログラムを先送りしようとしています。
これは、かつて「基本法」が与野党を超えた合意の上に成立した経緯を考えれば、およそあり得ない「暴挙」です。
「政治主導」で政策を遂行しようとするならば、それを実現できるチームを作ること、すなわち、「人事」がカギとなります。「内閣人事局」を無力化し、「内閣主導の人事」を妨げているようでは、「官僚依存からの脱却」などできるわけがありません。
政府提出法案では、幹部の人事制度についても定めていますが、これも、「政治主導の確立」や「年齢や官民を問わずやる気と能力のある人が集まる霞ヶ関の実現」とは程遠い内容です。すなわち、幹部を「一般職」の範囲にとどめるという、「基本法」の趣旨に反する内容になっているのです。
鳩山内閣が、かつての主張を捨て去り、「官僚依存の温存」「天下りの温存」に突き進もうとしているのはなぜでしょうか。
政権に就いた途端、「官僚依存が楽でよい」と考えたのでしょうか。あるいは、公務員の労働組合の主張に配慮せざるを得なくなったのでしょうか。
いずれにせよ、我々は、このような政府提出法案を、断じて、このまま成立させるわけにはいきません。このため、本来あるべき、公務員制度改革の内容を法案にまとめ、提出いたしました。
以下に、その概要を説明いたします。
第一に、「内閣人事局」には、総務省、人事院、財務省から、幹部人事の一元化のために必要な機能を移管します。
総務省の定員管理機能、人事院の級別定数管理機能、財務省の給与に関する機能などです。
また、「内閣人事局」には、新設の機能として、「総人件費管理」の機能も持たせ、人件費管理を徹底させます。
第二に、「幹部の人事制度」については、幹部は一般職とは別扱いの「幹部職」とし、新たに「幹部公務員法」を制定します。
30万人の国家公務員のうち、約600人(0.2%)の幹部職員については、「能力・実績主義」だけでなく、「内閣との一体性の確保」にも配慮した人事管理を行うこととし、政権のニーズに応えた人事配置を可能にします。
優秀な若手や民間人を幹部に抜擢登用するためには、当然、幹部ポストにある人を「幹部から外す」人事が必要です。このため、「幹部公務員法」では、「内閣による行政の遂行を最大限に効果的に行う上で必要と判断するとき」、幹部を、幹部より一ランク下である管理職の最上位まで降格することのできる制度を設けています。
「幹部公務員法」では、このほか、幹部職員の適格性審査、公募、給与などについて定めています。
また、事務次官などのポストは廃止し、この際、幹部ポスト全体を再整理することとしています。
第三に、課長以下の一般職の「給与体系」についても、抜本的な改革を早急に実行する必要があります。給与体系全体の改革を実行しない限り、総人件費改革はできません。民主党がマニフェストで掲げた「国家公務員人件費の2割削減」など、全くの絵空事です。
このため、我々の法案では、今年中に、給与制度の抜本的な見直しを行い法制上の措置を講ずることを定めています。
第四に、「天下り」について、まず、いわゆる「裏下り」を根絶するため、斡旋禁止違反に刑事罰を科すこととしています。
また、官民人材交流センターが従来行ってきた再就職斡旋は、分限免職時を含めて直ちに廃止し、センターは、給与体系の抜本見直しとあわせて廃止することとしています。
以上のように、我々の提案する法案は、正しい政治主導を確立しようとするものです。正しい政治主導とは、真に国家国民のために働いてくれる、やる気と活力と能力のある霞ヶ関の実現、ということでもあります。この法案は、そのための「幹部制度」、「内閣人事局」の仕組みなどを構築し、「天下りの根絶」も本当に実現するための制度を定めるものです。
議員諸氏におかれては、政府案と我々の提出した法案で、どちらが真に改革を実現しようとするものであるかを真摯にご検討いただき、我々の提出した法案にご賛同賜ることを強くお願い申し上げて、私の趣旨説明を終わります。
昨年夏の総選挙で、民主党は、「脱官僚依存」と「天下りの根絶」を最大の争点のひとつとして掲げ、政権交代を果たしました。
ところが、その後の政権運営はどうでしょうか。「天下りの根絶」は、政権発足後早々に、逆走が始まりました。日本郵政株式会社の社長に、元大蔵事務次官を就けるという典型的な天下り・わたり人事が、鳩山内閣の手で行われました。その後も、天下り人事が後を絶ちません。
「脱官僚依存」も迷走するばかりです。予算編成も、事業仕分けも、「財務省依存」で行われ、肝心なところで「政治主導」は全く発揮できていません。そうかと思えば、一方で、間違った「政治主導」も横行しています。総理以下が思いつきの発言を繰り返し、迷走を続ける普天間問題は、最たる例です。
もう一つ例を申し上げれば、先日、原口大臣、仙谷大臣、前原大臣が国会に遅刻されるという大失態がありました。報道によれば、原口大臣は、あろうことか、この責任を事務方に押し付け、遅刻問題を理由に、総務省の担当課長らを更迭したといいます。
自らの失態の責任をとらず、官僚に責任を押し付けようとする政治家に、「政治主導」を唱える資格はあるのでしょうか。
まして、防災担当の立場でありながら、地震発生時にSPも付けず出歩いていたことが報じられる中井国家公安委員長には、「政治主導」など夢にも考えないでいただきたい、というのが多くの国民の思いでしょう。
こうした、鳩山内閣の閣僚の皆さんの言動を見るにつけ、鳩山内閣には「政治主導の確立」、そのための「公務員制度改革」は、到底無理ではなかろうか、と思わずにいられませんでした。
そうした中、今回、鳩山内閣により「国家公務員法等の一部を改正する法律案」が提出されました。案の定というべきでしょうか。内容を見れば、政権交代前、野党時代の民主党が唱えていた主張とは、180度逆方向です。
かつての民主党の主張はどこに行ってしまったのか、と言わざるを得ません。
これまで、自民党政権において、「政治主導への転換」、「天下りの根絶」といった課題について、我々は、一歩一歩歩みを積み重ねてきました。これは、国民の皆さんから見れば、必ずしも満足いかず、「不十分」とか「スピードが遅すぎる」と見える面もあったかもしれません。こうした点は、我々は率直に反省しなければならないと思います。
しかし、今回、鳩山内閣が提出した法案は、こうした我々の積み重ねてきた成果を破壊し、「官僚依存の続行」、「天下りの温存」に突き進もうとする内容です。
こうした、国民を愚弄するような行いを、黙って見過ごすわけにはいきません。
そもそも、「脱官僚依存」や「天下りの根絶」、そして「真に国民のために働く、活力ある霞ヶ関の実現」といったテーマは、民主党が唱え始めたものではありません。自民党政権時代、最初は橋本行革の中で、こうした議論が本格的になされるようになりました。
その後、安倍内閣では、天下りの根絶を目的として、各省庁による再就職あっせんを禁止し、官民人材交流センターに一元化する法案を提出しました。この法案では、同時に、人事の基本を、明治時代以来続いていた「年功序列」から初めて「能力実績主義」へ転換することも定めて国会で成立しました。
当時、民主党は、この法案に対して、「センターは天下りバンクだ」と主張し、強く批判していましたが、今回の政府提出法案を見ると、むしろ、センターを再就職斡旋機関として位置付け直し、恒久化しようとしています。また、その後の「裏下り」の横行などに対しても、何ら措置が講じられていません。
その上、鳩山内閣の閣僚の方々は、「早期退職勧奨は続けざるを得ない」などとも言い始めています。かつて民主党は、「早期退職勧奨の廃止」こそが天下り根絶の切り札と訴え、マニフェスト詳細版にも明記していたではないですか。
民主党は、もはや「天下りの根絶」を断念したとしか思えません。
福田内閣では、公務員制度改革の全体像のプログラムを定める「国家公務員制度改革基本法案」を提出し、与野党を超えた修正協議を経て、国会で成立しました。
「基本法」で第一の課題とされた、幹部人事を内閣に一元化するとともに、公務員制度全体の企画立案などを行う「内閣人事局」の設置については、麻生内閣で法案を提出しました。残念ながら、この法案は、審議に入ることさえできず、廃案となりました。
今回の政府提出法案では、「内閣人事局」についての規定がおかれていますが、その内容は、驚くべきことに、麻生内閣の法案よりはるかに後退し、「何の力もない、無力な内閣人事局」を作ろうとするものになっています。
「基本法」で、「内閣人事局」には、総務省、人事院その他機関の機能を移管すると定めているにもかかわらず、「基本法」を無視し、機能を一切移管していません。
そして、あろうことか、「基本法」違反を逃れるため、「基本法」自体を改正し、プログラムを先送りしようとしています。
これは、かつて「基本法」が与野党を超えた合意の上に成立した経緯を考えれば、およそあり得ない「暴挙」です。
「政治主導」で政策を遂行しようとするならば、それを実現できるチームを作ること、すなわち、「人事」がカギとなります。「内閣人事局」を無力化し、「内閣主導の人事」を妨げているようでは、「官僚依存からの脱却」などできるわけがありません。
政府提出法案では、幹部の人事制度についても定めていますが、これも、「政治主導の確立」や「年齢や官民を問わずやる気と能力のある人が集まる霞ヶ関の実現」とは程遠い内容です。すなわち、幹部を「一般職」の範囲にとどめるという、「基本法」の趣旨に反する内容になっているのです。
鳩山内閣が、かつての主張を捨て去り、「官僚依存の温存」「天下りの温存」に突き進もうとしているのはなぜでしょうか。
政権に就いた途端、「官僚依存が楽でよい」と考えたのでしょうか。あるいは、公務員の労働組合の主張に配慮せざるを得なくなったのでしょうか。
いずれにせよ、我々は、このような政府提出法案を、断じて、このまま成立させるわけにはいきません。このため、本来あるべき、公務員制度改革の内容を法案にまとめ、提出いたしました。
以下に、その概要を説明いたします。
第一に、「内閣人事局」には、総務省、人事院、財務省から、幹部人事の一元化のために必要な機能を移管します。
総務省の定員管理機能、人事院の級別定数管理機能、財務省の給与に関する機能などです。
また、「内閣人事局」には、新設の機能として、「総人件費管理」の機能も持たせ、人件費管理を徹底させます。
第二に、「幹部の人事制度」については、幹部は一般職とは別扱いの「幹部職」とし、新たに「幹部公務員法」を制定します。
30万人の国家公務員のうち、約600人(0.2%)の幹部職員については、「能力・実績主義」だけでなく、「内閣との一体性の確保」にも配慮した人事管理を行うこととし、政権のニーズに応えた人事配置を可能にします。
優秀な若手や民間人を幹部に抜擢登用するためには、当然、幹部ポストにある人を「幹部から外す」人事が必要です。このため、「幹部公務員法」では、「内閣による行政の遂行を最大限に効果的に行う上で必要と判断するとき」、幹部を、幹部より一ランク下である管理職の最上位まで降格することのできる制度を設けています。
「幹部公務員法」では、このほか、幹部職員の適格性審査、公募、給与などについて定めています。
また、事務次官などのポストは廃止し、この際、幹部ポスト全体を再整理することとしています。
第三に、課長以下の一般職の「給与体系」についても、抜本的な改革を早急に実行する必要があります。給与体系全体の改革を実行しない限り、総人件費改革はできません。民主党がマニフェストで掲げた「国家公務員人件費の2割削減」など、全くの絵空事です。
このため、我々の法案では、今年中に、給与制度の抜本的な見直しを行い法制上の措置を講ずることを定めています。
第四に、「天下り」について、まず、いわゆる「裏下り」を根絶するため、斡旋禁止違反に刑事罰を科すこととしています。
また、官民人材交流センターが従来行ってきた再就職斡旋は、分限免職時を含めて直ちに廃止し、センターは、給与体系の抜本見直しとあわせて廃止することとしています。
以上のように、我々の提案する法案は、正しい政治主導を確立しようとするものです。正しい政治主導とは、真に国家国民のために働いてくれる、やる気と活力と能力のある霞ヶ関の実現、ということでもあります。この法案は、そのための「幹部制度」、「内閣人事局」の仕組みなどを構築し、「天下りの根絶」も本当に実現するための制度を定めるものです。
議員諸氏におかれては、政府案と我々の提出した法案で、どちらが真に改革を実現しようとするものであるかを真摯にご検討いただき、我々の提出した法案にご賛同賜ることを強くお願い申し上げて、私の趣旨説明を終わります。