2004/12/17
最近の資本市場、コーポレートガバナンスの諸問題に関する中間論点整理
私が小委員長を務める自民党「企業会計に関する小委員会」および「商法に関する小委員会」の合同会議では、本年10月中旬以降、西武鉄道等による企業情報開示面での相次ぐ不適切な事例の発覚を受け、コーポレートガバナンスのあり方、公開会社の責任、資本市場のインフラやその監督体制のあり方等について検討を重ねてきました。このほど、以下の通りこれまでの議論の中間論点整理をとりまとめ、今後も検討を深めることとなりました。
平成16年12月17日
自由民主党 政務調査会
金融調査会 企業会計に関する小委員会
法務部会 商法に関する小委員会
自由民主党 政務調査会
金融調査会 企業会計に関する小委員会
法務部会 商法に関する小委員会
本年10月中旬以降、西武鉄道等による有価証券報告書の記載訂正など不適切な事例の発覚が相次いだ。その結果、わが国の資本市場の基本的な制度的インフラであるディスクロージャー制度が必ずしも機能していないことが明らかになり、特に、公開会社の責任について国民の関心が高まっている。こうした状況を受けて、当合同小委員会では、コーポレート・ガバナンスのあり方、会計、監査、開示制度等をはじめとする資本市場のインフラやその監督体制のあり方等について、種々の検討を行ってきた。下記は、その際に提言された重要な方策を取りまとめたものである。
今後、当合同小委員会においては、具体的な成案を得るべく引き続き検討を深めていくこととするが、政府、市場開設者、公認会計士協会をはじめとする関係者においても、下記に示された論点を踏まえ、早急かつ主体的に問題解決に向けて取り組むことを期待する。
1.公開会社におけるコーポレート・ガバナンスの見直し
- 内部統制の確立
会社における内部統制システムの有効性の評価とこれに係るチェックのあり方について、取締役、監査役(監査委員会)、会計監査人の間で適切な役割分担と連携が行われるよう検討すること。
とりわけ上場会社等の公開企業については、代表取締役が有効な内部統制の構築義務を負い、その上で有価証券報告書等の適正性についての宣誓を行う制度を罰則付きで法定化させることを検討し、あわせて会計監査人に内部統制監査を実施させるための法整備を検討すること。 - 新たな「公開会社法」制度の構築
公開会社における情報開示は、証券取引法が定めるものを基本とし、また公開会社の会計監査制度は、証券取引法上の公認会計士・監査制度をもって行うなど、証券取引法の諸制度を前提とした、新たな「公開会社法」制度の構築に向けて検討を開始すること。
2.資本市場の監督体制の見直し
- 適切な違反の抑止
証券取引法上の開示書類の虚偽記載については、本年12月から、流通市場における民事上の無過失責任規定等が導入されるとともに、来年4月からは、発行開示書類の虚偽記載に対して課徴金制度が導入されることとされている。今後、民事責任規定の実施状況等につき注視していくとともに、継続開示を含めた開示義務違反を適切に抑止するとの観点から、課徴金制度のあり方について、検討すること。 - 資本市場に明確な責任を持つ新たな行政体制の検討
より強力な「市場の番人」が求められており、資本市場の監視機能等の強化を図り、資本市場に対する行政組織上の責任体制を確立すること。具体的な方向性としては、高い独立性と、課徴金等を自ら課す準司法的機能を有する新たな行政機関(いわゆる「日本版SEC」)を設けることについて、三条委員会形式を含め早急な検討を行うべき、との考え方や、金融サービス全般に対する実効的な監視・監督体制のあり方に留意しながら、既存の証券取引等監視委員会の改組・機能強化を行うべき、との考え方などが示された。
3.監査の実効性確保に向けた措置
- 監査役等の要件の厳格化
監査役・監査委員会取締役について会計に関する専門的な知見を有する者の選任を義務付けるとともに、社外取締役・社外監査役の要件について、「独立性」に関する要件を加えることを検討すること。
当面、公開企業については、社外取締役・社外監査役に係る「独立性」の状況等を含め、コーポレート・ガバナンスの状況についての適切な開示が行われるよう、有価証券報告書等における開示制度の充実を図ること。
- 会計監査人の監査体制、ローテーション等
公開企業に対する会計監査人の監査体制のあり方について、事前登録制の導入を行うべく、日本公認会計士協会が行う品質管理レビューや公認会計士・監査審査会が行うモニタリングの結果等を踏まえ検討すること。
当面、公開企業に対する会計監査人の監査体制や監査継続年数等について、適切な開示が行われるよう、有価証券報告書等における開示制度の充実を図ること。
また、会計監査人の当面のローテーション期間に関しては、法施行時期(平成16年4月)にかかわらず実質監査期間によるべき、との指摘を踏まえ、改正公認会計士法の立法趣旨に則り、会計監査人、監査法人において自主的に判断すること。
4.公開会社における基礎的な制度の見直し
- 子会社上場制度のあり方
公開会社の主体的な経営や適切なガバナンスを確保するとの観点から、各証券取引所は、子会社上場制度について見直しを含めた検討を行うこと。とりわけ、非公開の親会社については上場子会社の一般株主の権利を損なう可能性が高く、子会社上場のためには、非公開親会社の十分なディスクロージャー等を担保すべきこと、などを含め、取引所規則等の改正を検討すること。
- 企業集団法制の検討
企業集団における健全なコーポレート・ガバナンスの構築とその一般株主の権利の確保を図るべく、例えば、親会社と子会社間の責任のあり方や、子会社上場制度の是非等も含め、親会社と子会社との関係を法制上明確化させるべく検討を行うこと。 - 名義株式の解消等
いわゆる名義株式・管理株式については、特に公開会社においてその解消の徹底を図るべく、法制度上の扱いの明確化について検討を行うこと。また当面は、各証券取引所等において猶予期間を設けて企業に対し、解消要請を行うなど、関係各方面で主体的な取り組みを行うこと。
さらに、公開会社の開示情報における虚偽事実の存在が国税当局により了知された場合、税務調査等の実効性を保ちながら、開示担当当局と国税当局との間でどのような連携が可能か、法制度の整備を含め検討すること。
以上